こんにちは、えぶりシティ市長の山脇です。


コットンの種が服になるまでの過程を共有して楽しむプログラム「服のたね」。

 

オーナーである鎌田安里紗(かまだ ありさ)さんと出会ったのは2016年のこと。当時、モノの消費への価値観について意気投合した僕たちはいろんな思いを話し合い、対談という形でまとめました。

 

参照:

(2016.10.26)メディアがファッションをオカシくしてる?「買う」ことだけが正しい時代じゃない

http://qreators.jp/content/492/


あれから2年が過ぎ、僕らの考えはどのように変化したのか。「服のたね」にかける想いも交え、現在の考えについて改めて話しました。



「楽しく提案する」というスタンス

山脇耀平(以下、山脇):

前回の対談(2016年8月)から2年。考え方は変わりましたか? 当時鎌田さんは、エシカルという言葉について「生産者が誇りをもって語れる」ことだと説明してくれていて。僕はその考え方にめちゃくちゃ刺激を受けました。

鎌田安里紗(以下、鎌田):
当時は今よりもっと、洋服産業における、労働環境や自然環境にまつわる社会課題について「広めたい」というスタンスだったと思います。発信の仕方も「世の中で起きているこんな問題を知ってほしい」という語り方でした。


ただ、この2年で以前より多くのメディアや企業からそうした課題についての情報が発信され、事象自体はずいぶんメジャーになったように感じています。

なので今の私のスタンスとしては、課題をストレートに伝えるのではなく、その課題に向き合う個人的な解決策をポジティブに提案したい。

起きていることに対して「こういう向き合い方があるよね」とか「こっちのほうが良いよね」とか、自分の経験に沿って考え方を楽しくシェアしたいと思っています。

山脇:
なるほど、あくまで向き合い方の部分を楽しく伝えていくと。それは僕も大賛成です。今、鎌田さんと一緒に進行している「服のたね」はまさにその一例ですね。みんなでアクションして、考えを共有する。

コットンの種を育ててその過程をシェアし、そのコットンからできたシャツを着ようという服のたね。この企画は前提として「洋服の生産背景に興味を持ってもらうためのハードルを下げたい」という想いがありました。

鎌田:うんうん。


山脇:
エシカルも含め、理論的なこと、考え方というのは、言葉で説明してもなかなか伝わりづらい。特に言葉の定義に神経質になるほど、難しい概念になってしまうと感じていて。

本当に僕らが伝えたいことはもっとシンプルなはずなのに、複雑ゆえに、新しく関心を持つハードルが高くなってしまう。この課題をまずなんとかしたかった。

なので服のたねでは「コットンを育てる」というアクションから体験を得る中で服ができる過程について興味を持ってもらえればと考えたんです。種に水をあげるのは決して難しくないし、日常に溶け込んだ行為なので。

鎌田:水やりだけならハードルは低いですしね。

山脇:
もう一つ、企画を立ち上げる上で大切だと思ったのは「地理的に離れてても参加できる」ということ。みんなが集まらないと成り立たない取り組みにはしなくなかったので。

参加者が各々でコットンを育て生育状況をオンラインでシェアするという形式なら、どんな場所からでも関われるんじゃないかと。こういった考えから服のたねは誕生しました。

鎌田:
まさにそう。自分は仕事柄、普段から洋服の生産現場に行く機会がありますが、いざその様子を言葉にしようとすると、どうしても説明的になってしまって。


それに、どんなにフラットに語ろうとしても、私のフィルターを通した内容になってしまうので、伝え方によっては固定的で一面的な考え方を持たせてしまうかもしれない。

それよりは服のたねのように、参加者自身がアクションを起こして各々が自分なりの考えを深めていく方法の方が良いと思います。

山脇:
そういった意味では、鎌田さんが企画しているツアーもめちゃくちゃ良いですよね。

鎌田:
私が定期的に開催しているツアー「めぐる旅」では、主に海外の衣食住にまつわる生産現場を巡りながら、参加者同士でディスカッションを行います。


みんなの話を聞いていると、同じものを見たはずなのに、目に留まっている場面が違ったり、同じ出来事に関しても人によって解釈が違ったり。見える世界やそこから感じることは、本当に人それぞれだということを実感しています。

めぐる旅のように、たくさんの人が「現場に行って、体感して、自分で考える」機会をもっと作れたらなあと思いますね。


実感が大事


山脇:
それにしても、コットンって育てるのけっこう難しくないですか?笑 服のたね参加者の方々が意外に苦戦していて印象的でした。


鎌田:
芽が出ないとか、枯れてしまうとか、虫がついちゃうとか、せっかく芽が出たのにペットに食べられてしまうという方も居ましたね。笑


でも、そうやって経験してみること自体が大切なんだと思います。「大量に生産するのすごいな」とか「無農薬で育てるの大変だろうな」とか想像できるようになりますよね。

わたしも、コットンや野菜を育ててみるようになって、世の中のいろんなものが、安定的に供給されているすごさを実感しています。

山脇:
5月に種を植え始めて、順調にいけば秋頃の収穫ですよね。冬に生地を織って、春に縫製して、最後にみんなで着る。待ち遠しいですが、年に一度しかこの企画をできないのがもどかしい。並行して「お野菜のたね」とかも始めましょうか笑

鎌田:
やりましょう笑 さっき実感という言葉を使いましたが、これは最近大切にしている考え方の一つです。特に、主語が大きい話をするときに意識していたい。労働環境とか自然環境にまつわる話は、ぼんやりとした正論になってしまいがちです。


「今話している内容を自分ごとと感じてもらえるか「話を聞いた人でも気軽に実行できるアクションが浮かぶか」など。とかく大きなストーリーで語られがちな内容だからこそ、そこは慎重になりたいです。


山脇:
僕ら「EVERY DENIM」は、モノの届け方として何より実感を大切にしていて。今もキャンピングカーで47都道府県を巡りながら出会う土地の人々にデニムを販売しているのですが、これはまさに「お客さんと対面する」という実感を得たいからです。

僕らにとってはお客さんと接することで、たくさんの経験を得られるし、それがまた次のものづくりに繋がる。

逆にお客さんにとっては、やっぱり愛用して履いてほしいし、そのために「買ったぞ!」という実感を持ってもらいたい。来年の夏までこの旅は続くのですが、しっかり続けていきたいですね。

鎌田:
生産工場の名前や場所を公開したり、倫理的基準を明確にすることで、透明性や倫理性をアピールするアパレル企業は増えましたが、EVERY DENIMは「工場の人と仲が良い」とか、温度感を感じさてくれるところが貴重だし、素敵だと思っています。

山脇:
何が良い悪いの話ではなくて、自分たちがお客さんと向き合う上でのスタンスの差ですね。

モノを永く愛せる買い方



山脇:
実感を得ようとする態度は、消費者として「自分はいま何にお金を払っているのか」意識することに繋がると思っています。


鎌田:
確かにそう。例えば洋服を一着買うにしても、価格、品質、デザイン、接客、生産背景、などいろんな検討項目があって。自分はどれに魅力を感じて、欲しいと思ってるんだろうって考えてしまう。


そして、じっくり考えてるとたいてい深みにハマってしまってよくわからなくなってくる笑 「このモノを自分は一生大切に愛せるんだろうか」って。


山脇:
かと思えば、案外パッと買ったモノの方が永く使ってたりして笑

鎌田:
そうそう笑 永く愛せるモノの買い方は、条件を一概に語るのが難しいですよね。

買い物はとにかく購入するという行為自体が楽しんだ! という方もいますしね。自分が欲しかったモノを、ちゃんとお店で接客してもらって、買って、丁寧に包んでもらって持ち帰る。その瞬間の気持ちの高揚が大事なんだ! って。

山脇:
お店の方とのコミュニケーションが大事なんですね。

鎌田:
コミュニケーションといえば、私自身も経験があります。鍋を買いにお店に行った時、店頭でたまたま見つけた鍋がすごくかっこよくて。買おうと思ったら在庫がないとのこと。いつごろ入荷するのか聞いたら「手打ちなので、いつになるかわかりません。2ヶ月くらいかなぁ。」って。

 

ネットで探せば同じものを見つけられると思うのですが、なんとなくこのお店に入ってくるのを待とうと思いました。別に早く入手したいわけではないですし。

なんかそのお店の人とのやりとりも楽しくて、のんびり待ちました。

山脇:
別に早く手に入れたいわけじゃないっていうのはめちゃくちゃ共感します。そういうモノってたくさんありますよね、欲しいんだけれど、良い出会い方を待ってる。みたいな笑

ネットで徹底的に比較していろんな選択肢を調べる。そこまでの熱量を主体的に持って買ったモノは最近あまりないかもしれません。

それよりは「これめちゃくちゃ良いよ!」って勧められたモノばかりを買っている気がします。改めて振り返ると行き当たりばったりですね笑 でもそれを楽しんでいるのかな。

鎌田:
人それぞれに消費の楽しみ方があるんでしょうね。今の山脇さんにとっては「届け手の熱意を重要視する」という。私もすごくわかります。

届け手として大切なこと

 

山脇:

愛ある人に熱烈にプレゼンテーションされて買うモノって、めちゃくちゃ良くないですか?


鎌田:
良いです。特にそれが価値観を変えてくれた場合には、もっと良い。私は最近、海苔について感じました。


山脇:
海苔!笑

鎌田:
今までは海苔に対してそんなに意識を向けていなかったのですが、というより意識してないことにも気づいていなかった。典型的な「なんとなく消費」している部類のモノでした。

でも、海苔に対して熱い想いを持っている友人から話を聞いて、生産者さんのこととか、作られ方とか、生まれる土地の風土とか。たくさんのストーリーを吸収して感動して、海苔への考え方が変わりました。


以来、日常で海苔へのセンサーが増えました。海苔についての記事は目に止まるし、言葉を聞いて思い浮かべられることが多くなった。「日常で触れるもの」への感度を高めることが好きなんです。


年に一度の贅沢のために日々使うものはなんでもいいや、と思うのではなく、日々の生活の中で触れるたびに「ああ今日も良いなあ」と思えるモノを買いたいし身に付けたいと思っています。


山脇:
そういう風にして、いろんな物事への視点や接点、感性を増やしていくことが、豊かな人生につながりそうな気がしています。

ここまで、受け手=消費者側としての話を進めてきましたが、翻って最後に届け手側として、どんな風にモノをお届けするのが一番理想的なのか考えたいと思います。

 

鎌田:
はい、改めて。届け手としてどんな意識が大切だと思いますか?

山脇:
2年前の対談から今日まで何よりも「誇りを持って届けること」が大事だと考えてきました。そしてそれは根本的に変わっていません。いろいろ考えて、いまだその感覚であるということは、一つの普遍性があるんでしょうか。


僕らが旅をする中で出会う生産者さんも、素敵だなと思う方はみんな、自分のやっていることを誇りに思っているし、それをいきいきと語ってくれる。


誇りに思えるということは、自分がやっていることについて、理解しているということ、自分がやっていることについて、納得していること。自分がやっていることについて、責任を取れるということ。


この人たちは、決して逃げたりしません。知らなかったとか、それは他人の責任でしょうとか言わない。

届け手側のこういった意識は、正しさについて安易な善悪の基準を持ってしまいそうになっていた僕にとって本当に刺激でした。


鎌田:
着心地とか味とか、相対的に比較しづらい要素について、届け手が語る想いの強さって本当に大きいですよね。


山脇:
安全性や透明性も究極的には信頼でしかない。であれば、本気で話してくれる人のことを、僕は信頼するという人間でいたい。つねに客観的な指標を求めジャッジする人間になるよりも。

鎌田:
想いが届くかどうかは構造の問題でもあると思います。複雑なサプライチェーンでできあがったものは、それだけ関わった人たちが全体を把握しにくい、おのずと全部を語れる人は少なくなります。


だからこそ逆に、生産者と消費者が直接つながれるというのは貴重なんだと思います。

 

山脇:
服のたねは、消費者として服の生産の一部を体験することで、関心を持って欲しいという取り組みです。生産側に回ることできっと新しい気づきがたくさんあると思うので、ぜひこれからも、みんなで一緒に考え方をシェアしていきたいですね。


鎌田:
どんどん楽しくやっていきましょう!




2018年初秋